事業性融資推進法が変える資金調達 ~見えない価値を評価する新時代の幕開けと経営者の準備~

経営

【前書き:本コラムの視点】

 2024年に成立し、2026年5月の施行が目前に迫る「事業性融資の推進等に関する法律(事業性融資推進法)」。この法律は、日本の資金調達のあり方を根本から変える可能性を秘めています。しかし、具体的に「誰が」「何を」すべきか、不安を感じている経営者の方も多いのではないでしょうか。
 本コラムでは全3回にわたり、認定経営革新等支援機関であり、中小企業診断士・ITコーディネータの資格を持つSai10が、「経営・IT・金融」を繋ぐ専門家の視点から、中小企業と地域金融機関がこの新制度にどう向き合い、活用していくべきかを解説します。

■ 企業価値担保権の創設とは

 本法の主眼は、これまでの不動産担保や経営者保証に依存した融資慣行を転換することにあります。財務データには表れない「ノウハウ」「顧客基盤」「知的財産」「技術力」など、企業の無形資産を含む事業全体の価値を金融機関が適切に評価し、融資を行う「企業価値担保権」が創設されます。
 この仕組みにより、将来のキャッシュフローを含む事業全体の価値(総財産)を担保目的財産とすることが可能になり、専用の「企業価値担保権登記簿」への登記により対抗要件を備えることができます。また、新たに創設される信託業の免許を受けた「企業価値担保権信託会社」や、信託業務の兼営認可を受けた金融機関が「担保権者(受託者)」となります。
 これにより、有形資産に乏しいスタートアップや、経営者保証により事業承継を躊躇している企業、事業再生に取り組む企業が円滑に資金を調達し、成長に向かうことが期待されています。

■ 中小企業の経営者に求められる取り組み


この制度の恩恵を受けるためには、経営者自身が自社の「見えない価値」を分かりやすく説明する能動的な姿勢が必要です。

(1)自社の強み(無形資産)の可視化と言語化

 金融機関に対し、自社の技術力や顧客基盤がいかに将来の収益を生み出すかを示す必要があります。「ローカルベンチマーク」や「経営デザインシート」を活用し、定性的な強みを客観的に棚卸しすることで、自社の現状(As-Is)を正確に把握する基盤が整います。

(2)実現可能性の高い事業計画の策定

 将来のキャッシュフローを担保とするため、緻密な中長期事業計画書が求められます。単なる売上目標ではなく、将来の目指す姿(To-Be)を描き、現状とのギャップ(Gap)をどう埋め、競争優位性を保つかという「成長ストーリー」の策定です。「経営革新計画」のスキームを活用するのも効果的です。(1)と併せてみると、やはりAsIs-ToBe-Gapに基づくストーリーの策定が登場してきます。Sai10がこのコラムで繰り返し訴求していることの大切さがご理解いただけると幸甚です( https://blog-sai10-tm-consulting.com/asis_tobe_gap/ や https://blog-sai10-tm-consulting.com/logic-and-feelings/ をご覧ください)

(3)経営の透明性向上とDXの推進

 融資実行後も定期的な経営状況の報告が求められるため、日々の管理会計を適時に把握し、ガバナンスを高める体制づくり、すなわち社内業務のDX化が不可欠です。売上などの最終指標(KGI)だけでなく、そこに至る先行指標(KPI)を適切に設定し、データに基づき早期に課題(Gap)を発見・改善する仕組みが必要となります。

【次回予告】

 今回は、新制度の概要と経営者が取り組むべき準備についてお話ししました。自社の強みを可視化し、計画やデータに落とし込むことは非常に重要です。しかし、それを受け取り、お金を貸す側である「金融機関」には、どのような変化が求められているのでしょうか?
次回(第2回)は、地域金融機関に求められる「目利き力」と「伴走型支援」のリアル、そして彼らが直面するリソース不足の課題について深く掘り下げます。資金調達のもう一方の主役の動きを知ることで、経営者の皆様が取るべき次の一手が見えてくるはずです。ご期待ください。

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