人的資本経営について(一人ひとりの成長)

人的資本経営

 前回、人的資本経営について、Sai10なりの考えを述べてみました。JR九州の例を出して、人的資本経営に重要なことは”一人ひとり“がどのように考え、どのような活動をしていくか、を意識して実行することと考えます。企業(組織)は、そのきっかけを十分に提供する責務がありますが、そのきっかけをどう活用するかは”一人ひとり“に依存していきます。2回目の人的資本経営は、”一人ひとり“をもう少し深堀りしてみます。
 企業(組織)に属している“人”がそれぞれの役割を果たすため、その役割を認識させるのは事業に関わる社会でも重要であることは言うまでもありません。その役割に一人ひとりの十分な理解がないと、色んな目標は達成できないとも思います。

一人ひとりが役割を理解するために果たす上級者の役割とは

 部署をも越えた“共通ミッション”を促すことをコミットメントする経営陣をはじめとした上の立場の人ほど、自分が部下や同僚たちのところへ行って腹を割って話し、相手の能力に合ったコミュニケーションをすべきです。その時、Sai10は、
 “Yes/No”
で答えられるコミュニケーションではなく、
 “あなたはどう思う?”
という相手が答えるコミュニケーションをします。この時、相手から“どう思いますか”と聞かれるまで、自分の方から、意見を述べない、言いたくても我慢する、という姿勢が大切と思います。


“Yes/No”でなく、”あなたはどう思う”の答える=自分の意見をいうこと


はとても労力がかかることです。そうして自ら考えて動く人材が育っていきます。“何でも話せる”、“話を聞いてもらえる”といった心理的安全性が企業(組織)内に行き渡っているというような力の醸成が人的資本経営だと感じます。このような心理的安全性は何も研修時間や男性育休取得率、健康診断受診率といった指標では測定しづらい事項です。しかし、一人ひとりが考え、経営陣や先輩、専門家といった自分の考えとの同じ点、異なった視点をこのコミュニケーションから習得する、習得する機会を持つことで、企業(組織)の重要な価値観をメンバーが共有できます。結果として“これまでの枠を超えた新しい取り組み”、“他責ではなく、自責で行動”、“成果へのこだわり”といった企業(組織)が期待する能力を有する人材が増えていきます。Sai10の経験では、時間がかかります。皆さん大人ですから、自分なりの価値観なり、考えを持っています。その考えの一部を使って、企業(組織)が進むべくベクトルを合わせていこう、という意識は少なくとも芽生えてきます。

 多くの経営者は、経営力の差を戦略に求めがちです。しかし、実際には戦略自体には大きな差がないことは多々あります。違いはその策定した戦略をどのように実行し、戦略を実現するかあり、その実体は一人ひとりの能力と心理的安全性と中心とした企業(組織)文化にあり、一人ひとりの能力と企業(組織)文化は、正に人的資本経営に他ならないと思います。

Teamが強くなるためには、まず一人ひとりが強くなること

 Sai10は、一人ひとりが強くないとTeamとしても強くなれないと思っています。World Baseball Classic(WBC)やサッカーやバレーボールのワールドカップを観ても解るように、大谷翔平にしろ、三苫薫にしろ、石川祐希にしろ、一流に選手が集まって、初めて優勝なり、そのチームの目標が達成されます。一流の大谷やダルビッシュ、吉田正尚がいての優勝です。いくら栗山監督でも、甲子園で優勝した慶応高校ナインをメンバーにしたWBC優勝は無理だったと思います。昔、愚息が通っていた中学の学年主任がこんなことを言っていました。学校全体の学力を上げるには、この学年の底上げが必要である。下位メンバーの成績があがると中位より上は、それに釣られるように上がっていく。結果として学年全体の学力が上がっていく、と。成績が今一つの生徒には手厚く?指導していこうという意思を示されていました。このような個人の力量を上げることはスポーツや学生だけの世界に成り立つものではないとSai10は思っています。

 

一人ひとりが強くなることは、一人ひとりが成長すること

 では、どうすれば一人ひとりとして強くなれるのか。それは人としての成長です。実績より、実力をつけることです。今までできなかったことができるようになる。解らなかったことが解るようになる。これらは全て成長に他なりません。“できたこと”“解ったこと”は、もしかしたら、その企業(組織)でその人が初めてかもしれません。それは素晴らしいことです。実力がある社会人と呼べます。若い社会人は実績があまりなく、ベテランの社会人は実績があるのは当たり前です。しかし、実力はどうか?は次元は別と思います。実績がない社会人が実力を持つことは易しいです。

 持たない人が、持てるようになるには? これは“欲”と“強さ”が、正義と思います。“解りたい”という欲求は、正義です。諸君は昨日までの専門家であったかもしれないが、明日の専門家である保証はない。状況に応じて、必要な実力をつけよ”とは司馬遼太郎 坂の上の雲の一節です。実績は過去の結果でしかないが、実力は将来への可能性を秘めます。そして、これは、Growth Mindset、つまり、資質は努力で伸ばすことができる、です。一人ひとりは、本気で仕事なり、スポーツなり、勉学に取り組んでいます。本気で取り組んでいるからこそ誰か(Team)助けてくれる、に繋がってきます。そして、この努力の差が実力の差になる、という2つの事象は武田信玄の正範語録に記述されている訳です。みんな繋がっています。

 これらの心がけは、新入社員も現役社員(しかも若手社員とベテラン社員)も同じ社会人ですので、やることの規模、困難度、責任範囲等は異なりますが、心がけることは全部同じと思います。“成長”は若手社会人だけに要求される事項ではありません。

人的資本経営をやりましょう

 有価証券報告書に記載する/しない、は別として、人的資本経営は、企業にとって不可欠な事項といえます。上場企業のように、様々な指標を入れるのももちろん、悪いことではありませんが、心理的安全性を確保したメンバー全体が双方のコミュニケーションができるようになる、継続していく、という方がもっと重要と思います。

 人的資本経営のやる、と宣言したからには、長期計画を描いた上で「すぐにやる(計画だけに時間をかけるのではなく、まずは即実行してみる)」「たくさんやる(数多くの施策を実行する)」ことが重要です。やってみる、それを繰り返していくことが参画者も増えるし、経験値も上がります。どのような活動に、参画者が心地よい、と感じるかが解ってきます。それが、企業(組織)価値の向上につながっていくとSai10は信じています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました