“資金実績表”は、中小機構が提供している以下の資料に記載があります。
経営改善・事業再生研修【基礎編】 P34、P36
(https://www.smrj.go.jp/supporter/training/nintei/regional2/)
この資料によると、事業再生計画と経営改善計画書では共通して、以下の内容を求められています。
「過去1年程度の資金繰りの実績」と、「将来6ヶ月程度の資金繰りの見込み」を記載する。
資金繰りは多くの中小企業の関係者にとって最大の関心事であり、事業再生計画、経営改善計画にを問わず、的確な記載が求められます。
“資金実績表”作成の目的と役割
”資金実績表”は、現在の借入返済条件の下で、元利金返済の継続が可能かどうか、またその前提で事業継続が現実的かどうかを判断するために作成されます。“実績表”と称されていますが、近い将来の資金繰り状況も含め、実態に即した記載が必要です。将来的に資金繰りに支障が生じることが明らかであれば、債務者企業内部での改善施策や金融支援の必要性を明示し、支援を要請することが求められます。
実績と見込みの両方を一体で記載することで、以下のように活用できます。
・実績部分:予測との差異分析、課題の発見と改善策の立案
・見込部分:金融機関や支援機関への説明・交渉材料、資金調達計画の策定
Sai10としては、”資金実績表”は”資金繰り表”との明確な区別をせず、むしろ財務三表と同等以上に重要な経営資料であると考えています。
資金実績表の構成要素と記載上のポイント
実際の入出金ベースで記録していきます
1.資金実績表に記載する期間
実際の入出金ベースで記録します。基本的な構成は以下の通りです。月単位で示していきます
・実績期間:過去12か月以上(推奨)
・見込期間:将来6か月以上(最低)
・合計:24か月(2年)分の記載が望ましい
例 現在が2025年6月の場合
決算月 | 記載期間 | 実績期間 | 見込期間 |
3月決算 | 24年 4月~26年 3月 | 24年 4月~25年5月 | 25年6月~26年 3月 |
8月決算 | 23年12月~25年11月 | 23年12月~25年5月 | 25年6月~25年11月 |
事業再生・経営改善に向けた協議と金融機関との合意形成にはおおむね再生開始まで6か月程度を要します。その期間に資金ショートを起こすことのないように、最低6か月先までの見通しは不可欠です。
2.資金収支の分類と内容
資金収支は、経常収支と経常外収支の2つに分類します
・経常収支(通常の事業活動に基づく)
・経常収入:現金売上、受取手形入金、売掛金入金 など
・経常支出:仕入代金支払、買掛金支払、人件費、諸経費、支払利息、税金 など
・経常外収支(通常の事業活動外の資金の流れ)
・入金:借入金調達、補助金 など
・支出:借入金返済、設備投資 など
・月末資金残高:月末時点の現預金残高。その月の貸借対照表(B/S)の現預金額と一致する必要があります。
注:経営改善計画書の場合には、月ごとの売上高、現預金残高、借入金調達と借入金返済のみの記載で“資金実績表”とする場合もあると思います。しかし、上記の項目については日ごろから留意してくことが重要です
3.見込の立て方と考え方
将来見込はあくまで「現時点の成り行き想定」でよく、深く練り上げたものである必要はありません。つまり、「現状を放置すれば資金繰りが悪化する」ことを示し、その上で改善計画の必要性と支援依頼の根拠を提示するものです。
再生計画や改善計画の策定が進めば、その内容を反映した最新の資金繰り見込に更新し、再度この資金実績表に記載すれば良いと考えます。
4.実績から得られる読み取る改善のヒント
“資金実績表“に限りませんが、数値データをまとめたら、”そこから何が言えるか“を読み取ることが重要です。それをコメントとして、”資金実績表“の下にコメントとして記載しておくことが経営者の考えを示すことにつながります。具体的には
・毎月の入出金の変化(季節性、賞与、税金支払、年払い等の影響)
・契約条件通りに入出金されているかの検証
・想定外の入出金(特に未契約、条件外の取引)の有無
・顧客の決算期や支払傾向による傾向変化
これらを通じて、課題の発見と改善点の立案が可能になります
次回から、“計数計画概要・具体的施策”といよいよ経営改善、事業再生の肝の部分に入っていきます。
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