ストーリーの策定方法

経営

 前回はストーリーを作ることはとても重要であることをお話しました。
 今回は、“どうやってストーリーを作っていけば良いか”についていくつか例を上げて示してみますSai10は、How to ものは、あまり好きではないのですが、お作法のように、最低限守らなくてはならないルールのようなものはどこにでもどんな分野でもあると思っています。Key Wordsは、“現状(AsIs)”、“達成すべき目標(ToBe)”、“解決すべき問題点(Gap)”の3つです。

現状(AsIs)と達成したい目標(ToBe)を決める

 まず、現状認識と将来、達成したい目標を決めます。普通は、現状より将来の目標の方がよくなっている、ことを期待しています。ここでの気にする点は2つ

1-1 現在の位置と達成したい目標は、同じ単位で記述する

 表1に具体例を示してみます。

 現状 (AsIs)達成したい目標 (ToBe)単位
売上高10M\20M\M\
不良率5%1%
月あたり生産数10個20個日
製品1pあたりの材料費50k\25k\k\
作業工数3人月2人月人月
表1 現状と達成したい目標の設定例

同じ単位で記述することを意識できれば、自然と数字で議論することになります。ここが大切です。現状分析、将来の目標は必ず、数字で議論できるように留意していきます。数字には誤解が基本的にありません。したがって、論理を立てやすくなります。

1-2 現在の位置と達成したい目標を“NOT”で結んではいけない

 なぜ、“NOT”で結んでいてはいけないか。それは、下記の式がなりたってしまって、同じことを示していることにすぎないからです。

 NOT 現状=達成したい目標
現状=NOT 達成したい目標

 例えば、下記のような表現です。
 現状:売上高が20M\に達していない。
 目標:売上高を20M\にする

 現状:作業ミスが発生している
 目標:作業ミスが発生しないようにする
など。この表現のどこが悪いのでしょうか。その理由は2つです。
 一つ目は単純で、“NOT”がついている・いない、は同じことを示しています。思考に変更はありません。
 二つ目は、2項に示す様にGapを具体的示したいのですが、現状と目標を“NOT”で結んでいるとGapを示せないからです。そうすると、目標を達成するためにやるべきことは。。。。
頑張ろう!という精神論になります。これでは、具体的な行動に起こせず、問題点が解決しませんし、そもそも解決する方向に進むかどうかも、“頑張ろう”と励まされた一部の方(組織)の精神に期待するしかありません。こんなことなら、“現状と目標を言わなければ、良かった“になり、だれも解決すべき問題点を示そう、となりません。

以上の2点に注意して、現在の位置と達成したい目標を具体的な数字で示していくとが、これからやるべきことの可視化、つまり、関係者が平等に理解できる形にすることができます。

目標を達成するためには、何をしなければならないか

 現状の位置(AsIs)と達成したい目標(ToBe)が数字で表現できたら、その間がGapとなりこれが解決すべき問題点となります。つまり


【達成したい目標(ToBe)】-【現状(AsIs)】=【解決すべき問題点(Gap)】


という等式が成り立ちますが、ここでお話したい重要な留意点は
右辺の単位は、左辺の単位と異なるように設定する
ことです

2-1 “Gap“の単位は、”AsIs “と”ToBe”で設定した単位と変更する

“解決すべき問題点“の単位を、AsIsやToBeと異なる単位にする理由は、単純です。

 表1を例にしてAsIsとToBeの引き算として“解決すべき問題点”を表2に示してみます。表2には3列の数字がありますが、独立変数は2列です。2列にしてしまうと、注に記載しているような“What/How” の部分が出現します。つまり、まだどの部分にどう手を付けて良いか、不明なままになっています。

 現状 (AsIs)達成したい目標 (ToBe)解決すべき 問題点(Gap)      注
売上高10M\20M\10M\どうやって、10M\の売上高を増やせば良いのか
不良率5%1%4%何を改善すれば、歩留が4%改善するのか
月あたり生産数10個20個日10個どうすれば、2倍の生産性が達成できる?
製品1pあたりの材料費50k\25k\25M\どうやって材料費を下げていけば良いのか
作業工数3人月2人月1人月作業工数はどうやって下げるの
表2 Gapの単位をAsIsやToBeと同じ単位とした例

 Sai10の言う、解決すべき課題(Gap)とは、具体的な行動に落とし込むこと、にあります。そのためには、左辺の単位が金額なら、金額に繋がる行動を考えて、何をするか(What)/どのようにするか(How)、まで想定して、ストーリーを策定して、初めて“解決すべき課題(Gap)”を見つけることができた、とします。例えば表2の例を用いて、Gapの単位を設定した例を表3に示します

  左辺 単位ただの引き算から得られる疑問     Gap”Gap”の単位
売上高M\どうやって、10M\の売上高を増やせば良いのか得意先A社のシェアを〇〇%にする%
不良率何を改善すれば、歩留が4%改善するのか〇〇の標準偏差が10→8にする無単位
月あたり生産数どうすれば、2倍の生産性が達成できる?製造装置Aの稼働率を〇〇分→〇〇分にする時間
製品1pあたりの材料費k\どうやって材料費を下げていけば良いのか〇〇工程以降の歩留を××%に上げる
作業工数人月作業工数はどうやって下げるの非付加価値工程数を削減する。工程
表3 Gapの単位をAsIsやToBeから変更した例

 ”ストーリーを策定するには3つの要素が要る“というからには、別な要素であることを考える・抽出しなければなりません。これで初めて、問題点が見える化します。そうして、初めてToBeに向かって問題点を解決するストーリーが策定できます。ストーリーを進めていくにあたり生じる結果をよくイメージします。プロジェクトが成功の至るストーリーが結果を伴う姿としてイメージ出来ていて、それを見える形にすることが確実に成果を生む秘訣です。問題を見える化してストーリーが出来ればあとは実行するだけです。

2-2 “Gap”が解決できないときは?

 “AsIs“から”Gap“を解決して、”ToBe“に至る。成長したことになります。今度は、達成した”ToBe”が“AsIs”となり、次の“ToBe”に進んでいきます。成長が継続して行われることになります。

 時には、“Gap”を解決することができないこともあるかもしれません。その時は、その時に設定した“Gap”が(その部門・会社が解決するには)十分でなかったと謙虚に捉えて反省します。反省は、事実に基づき、“責任を追及する“、というのではなく、”次はどうするか“に注目します。適切な”責任“は反省の上で必要ですが、個人とか、単一部門とか、Uncontrollableは社会とか、自身に無関係な対象のせいにしないことが大切です。次に自身の行動に繋がる反省を行い、これが、次の成長の糧になります。反省はとても重要です。だから、”Gap”は会社・部門・個人が成長する源泉です。

 むしろ、最も悪いのは、“Gap”がないと認識することです。

 これは、”ToBe”という次の段階がないか、“AsIs”に満足していて、自ら成長しようという意思がないことを意味します。そういうところに限って、不都合は、全部、他部門・他者・社会のせいにします。そのような中では成長は絶対にないとSai10は強く思います。

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