生産性向上とは何か、何のために行うのか

経営

2026年4月から栃木県よろず支援拠点の中に設けられた生産性向上支援センター( https://tochigi-yorozu.go.jp/info/11212/ )に機会があって、サポーターとして参画しています。この生産性向上支援センターは、栃木県だけにあるのではなく、全国にあります。経済産業省の26年度の施策の一つとして全国のよろず支援拠点に開設されました(https://www.meti.go.jp/press/2026/04/20260401001/20260401001.html )。 “生産性向上支援”という組織ですので、今回は「生産性向上とは何か、何のために行うのか」をテーマに記述してみたいと思います。

生産性向上はGapを埋める手段である

 生産性向上という言葉は広く使われていますが、最初に整理すべきは「何のために行うのか」という視点です。経営においては、現状(AsIs)を正しく把握し、目指す姿(ToBe)を描き、その差分(Gap)を明確にすることが出発点と捉えています。このGapこそが「解決すべき課題」です(https://blog-sai10-tm-consulting.com/asis_tobe_gap/)。 Gapを解決する有効な手段が生産性向上であるなら、生産性向上は、取り組むべき施策となります。逆に言えば、Gapが曖昧なままでは、生産性向上は単なる流行への対応に終わってしまう可能性があります。

自動化は「全体最適」があって初めて機能する

 よく見られるのは、「生産性向上=自動化設備やDX導入」と短絡的に捉えるケースです。確かに自動化は、人が行っていた作業を機械やシステムに置き換える有効な手段であり、作業時間の短縮、人的ミスの削減、人材の付加価値業務への再配置といったメリットがあります。Sai10も以前、“何のために自動化するのか”というタイトルでコラムを綴ったことがあります( https://blog-sai10-tm-consulting.com/automation-1/ https://blog-sai10-tm-consulting.com/automation-2/ ).。 

しかし自動化には投資が伴い、それを回収できるだけの生産高の向上が実現し、その結果、売上向上の見通しがなければ経営的に成立しません。また、省人化を目的にした自動化施策ならば、省人化が実現し、その人材を今後、どう活かすかという視点も不可欠です。単に人を減らすのか、新たな付加価値創出に振り向けるのか――この判断は、ToBeが明確でなければできません。

さらに見落とされがちなのが、全体最適の視点です。製品やサービス実現に複数の工程がある場合、一部の工程だけを自動化しても、他の工程がボトルネックであれば生産高は増えません。自動化は「部分改善」ではなく、「全体の流れの中での最適化」として捉える必要があります。

To Beの共有が、現場を主体的に動かす

DXも同様です。システム導入は必ず業務プロセスの変更を伴います。現場が「なぜ変えるのか」「変えた結果どう良くなるのか」を腹落ちしていなければ、形だけの導入に終わります。ToBeを共有することで、初めて現場は主体的に動くことができると思います。

よくあるのが、既存の業務フローをそのままシステムに乗せてしまうケースです。これでは非効率なプロセスをデジタル化しただけであり、生産性の向上にはつながりません。To Beを起点に「あるべき業務プロセス」を先に設計し、そこにシステムを合わせていく順序が本来の姿です。システムに業務を合わせるのではなく、業務の目的にシステムを合わせる――この発想の転換が、DX活用の成否を分けます。

「何を実現したいか」から考える

生産性向上はあくまで手段です。経営者にとっての「売上・利益の改善」、従業員にとっての「残業削減」や「できなかったことができるようになること」など、生産性向上が関係者それぞれの実現したいことに向かう手段として機能するとき、初めて価値ある取り組みとなります。大切なのは「何を導入するか」より「何を実現したいか」から考えることと思います。

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