事業再生(その1:Introductio))

事業再生

 令和7年度がスタートして約1ヶ月が経過しました。国や各地方公共団体では、新しい予算の執行が始まっています。一方で、最近の物価高騰に伴う原材料費や人件費の上昇、トランプ関税、エネルギー問題、長期化しているウクライナ情勢など、事業を取り巻く環境はますます厳しくなっています。このような事業環境の中で、意図せず経常利益が赤字となり、それが継続した結果、最終的に債務超過に陥る企業も少なくありません。
 また、コロナ禍で利用された“ゼロゼロ融資”の返済が昨年から本格的に始まり、その負担が企業経営に重くのしかかっています。“ゼロゼロ融資”は補助金ではなく、返済義務が伴う融資であるため、コロナ禍当時には想定されていなかった市場環境の変化により返済が困難になっているケースが散見されます。

ゼロゼロ融資対応策の例

ゼロゼロ融資への対応策として、ここでは3つを示してみます

があります。各地方公共団体でも同様なプログラムがあると思います。

 これらの仕組みを活用することは重要ですが、それぞれに申請条件があり、審査は厳格です。事業計画を策定する際には、金融機関(主に信用保証協会)を納得させるため、これまでとは異なる新たな視点や実現可能性の高い内容が求められます。例えば、経営課題や対応策、損益予測、そして資金繰りの見通しを具体的に示す必要があります。これには、「事業再構築」や「経営革新計画」を超える内容が必要と考えられます。

 多くの経営者は、不採算事業の見直しや、これまで事業に貢献してきた資産(設備や人材)を手放す決断を避けたいと考えます。しかし、これらをあえて実行する必要があることもまた、事実です。このプロセスは「事業再生」または「企業再生」と呼ばれます。

今回は、この「事業再生」の手順について、Sai10なりの視点で数回に分けて示していこうと考えています。

事業再生の目的と手段

事業再生の目的は、事業(企業)の安定的な継続です。その手段としては、以下が挙げられます

税引き後純利益を黒字化し、債務超過の解消に向けて取り組むこと

キャッシュフローをプラスに転じさせ、借入金の返済を進めること

具体的な数値の目標としては、”中小企業の事業再生ガイドライン(令和4年3月、令和6年1月改定)”(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/sme-gl/sme-guideline_202401.pdf)
に基づき、以下の3点が挙げられます:

  • 債務超過: 事業再生計画成立後、最初に到来する事業年度開始の日から5年以内を目途に、債務超過を解消する。
  • 経常利益: 事業再生計画成立後、最初に到来する事業年度開始の日から概ね3年以内を目途に、黒字化を実現する。
  • 有利子負債: 事業再生計画の終了年度(原則として債務超過を解消する年度)において、有利子負債の対キャッシュフロー比率を概ね10倍以下にする。

これらの目標を意識して計画を策定していくことが重要です。次回からどのような視点で事業再生計画を策定していくか、簡単な例を示しながら考えていきたいと思います

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