壁を乗り越える 誰かが助けてくれる

人的資本経営

 日経ビジネス2024年6月24日号の第2特集に、様々な業界の中堅企業のTOPが“成長の壁”をどのように乗り越えて行くか、という議論の様子を掲載していまいた。Sai10はその中で相模屋食品社長 鳥越淳司氏のコメントが目に留まりました。どのようなコメントにSai10がどのように感じたかを述べていきたいと思います。
 その内容は司会者が鳥越氏に、会社の成長過程で“壁”が現れた時の対応を伺ったところ、下記のような3項目の回答があったというのがSai10の理解です。

1. 苦難はたくさんあり、そのたびに正面からぶつかってきた。
2. “壁”が現れてきたときこそ、“(経験を積む)チャンスだ”思って、最前線に出てやってみることが大事である。
3-1.自分が前に出て一生懸命頑張っていると、やがて誰かが助けてくれるということも身をもって経験した。
3-2.自分自身が覚悟を決めて率先垂範すると自然と仲間が増えてきて、実現できることも増えていくと思う。

 今回は、この1~3についてSai10なりの解釈を述べてみようと思います。話の進め方の都合上、2から始めます

“壁”が現れたときこそ、“経験を積むチャンスだ”

 Sai10は日ごろ、自身が所属している企業なり、クライアントの経営幹部の皆様に、“企業人としての成長をしていきましょう”とお話しています。ここでいう“成長”とは、“これまで解らなかったこと、できなかったことが解るようになる、できるようになること”です、としています。多分に製造業を意識はしていますが、どの業界にも当てはまることと思っています。

 製造業でしたら、これまで想定通りに加工できた工程である時、想定以外の不良が発生し、納期問題やコスト増を招いた時に、何かが変化した、させたことを考えます。その変化は意図した・しないに関わらずの場合も少なくありません。本来、管理すべき項目があるにも関わらず、その影響を十分に掴めていなかったことが要因です。製造はある意味、自然科学の元で実行されるので、この自然に逆らっては、良い結果を産み出すことはできません。このような想定外の事象が発生したのが、“壁”でこの壁がどのようなプロセスで発生したか、が解れば、その対応ができます。100%解明できなくても、“壁”を低くすることができれば、納期問題まで発生せずに対応できたり、コストを別な部分で吸収できたりする対応にも繋がってきます。この経験が、次の同様な事象の発生の抑制なり、早期な対応なり、が実行され、企業の内外の信用を獲得することに大きく繋がります。

 これらは人がやることであり、AIで示されるものではないと思います。AIは、条件が与えられれば、相応の回答を示しますが、全部の条件を与えることはできません。そもそも全てかを示すことは容易ではありませんし。

 経験は、その場面に巡り合った人のある意味、特権です。せっかく、平等に与えられた24時間の中で出会った経験は、できるだけ、自分のものとしていく心がけは大切にしたいと思っています。

 “壁”から学んだ例(Sai10に場合)

 Sai10の経験を一つご紹介します。Sai10は、かつてある製品設計の技術者でした。Sai10が設計した製品の製品化の時機が近づいていきました。しかし、所謂歩留が目標に到達しません。毎月、設計者であるSai10が試作の計画を工程ごとに立てます。この計画を工場に提示して、製造装置を割り振ってもらいます。製品が良品であれば、適切な手続きの後、製品として認定されます。製品とする日程は、このSai10が立案する計画に予め反映させておきます。もし、不具合があり、製品とならなかった場合は、その原因を検証して、次の試作へ反映させる、という手続きを繰り返します。
 毎月、決して高くはない歩留を考慮し、相応の余裕をもって試作の計画を立案しているはずですが、連続した不良が発生すると当初の製品実現日程からずれが生じます。ずれが生じそうになったら、当初の計画を変更すれば良いのですが、当時の会社のスタンスは“自身が立案した計画である。途中でその計画が実現できないと判ったら、何か工夫して、当初の計画を達成すること”でした。Sai10の立てた工程計画は確かにSai10が立てましたが、そのスケジュールは、標準生産品として実現できている製品のスケジュールと同じです。その標準を根本から変更する必要=“壁”、ができました。実際には工程時間を60%削減する必要が生じました。その時、Sai10はECRSの原則(注)に則って、工程の合理化を行い、当初の計画を遂行することに成功しました。今では、この時実現した新しい工程設計を標準生産品まで全て適応しました。大切なことは自然に逆らわないこと、例えば、上にあるモノは下に行く、温度は高い所から低い方へ移動する、と言うようなことでした。この原則は絶対に外さず、上手に活用することです。 

(注)ECRSの原則:業務の「ムダ」を洗い出し、改善措置を講じるための基本的な行動指針です。4つの頭文字はそれぞれ改善に向けて取り入れるべき観点を示しており、「Eliminate(排除)」「Combine(統合)」「Rearrange(組み替え)」「Simplify(簡素化)」を意味しています。

 次は鳥越氏のコメントの1と3についてです。これらは以前、このブロブでも紹介した“正範語録”に繋がると感じました

本気でしているから、誰かが助けてくれる

 上記の表題は、鳥越氏のコメントとは異なりますが、Sai10の理解は“正範語録”の最終段落の“本気”に関する3つのPhraseの3つめです。“正範語録”はこのブログでも過去に掲載しました(https://blog-sai10-tm-consulting.com/seihangoroku2/)。一応、3つとも上げておくと

 本気ですると大抵のことはできる
 本気でするから何でも面白い
 本気でしているから、誰かが助けてくれる

です。鳥越氏のコメントの“正面からぶつかってきた”と“自分が前に出て一生懸命頑張っていると”が“本気”に相当し、“やがて誰かが助けてくれるということも身をもって経験した”は、正に“誰かが助けてくれる”に相当していると感じます。

 Sai10の前段で示した試作でも、多くの方々に助けていただきました。試作を実行するのに、工場の現場の技能者の方とその方たちをまとめて監督している職長さんのような方々が、Sai10の本来の業務である不具合原因の検証や工程の入替が製品品質にどのような影響を与えるのかの検証に時間が取れるように、既に設計で決まった工程については、実作業をしていただきました(当時の言葉では、作業移管と呼ばれました。正式に設計が全て完了した設計移管が実現していなくても部分的に移管をうけていただきました)。新しいことにSai10がそれこそ自身が立案した計画を遵守するために徹夜も厭わず?“本気”で取り組んでいることを見て下さっていて、手伝っていただけたのだと思います。
 “良い仕事をしていると見ている人は必ずいる、それは社内にいるとは限らない“、とはよく言われます。今回は、社内の人が助けてくれた例でした。このように“本気”で取り組むことは、だれかが助けてくれて、それがTeamで業務を完遂することに繋がることと思います!

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