2回に渡って、“正範語録”の各Phraseを見てきました。ここでもう一度、“正範語録”の第1節の2つの文を掲載します。
実力の差は努力の差
実績の差は責任感の差
ここで、Sai10は、“もし、どちらか一方と言われたら、実力と実績ではどちらが優先しますか?”と問いかけにSai10は“実力を選択する“を選びました。その理由は“実績”は過去のものですが、”実力“は将来への可能性を秘めているから、というものでした。この“実績”について、2つのエピソードを示してみます。
諸君は昨日までの専門家であり・・・
1つめはまたまた、司馬遼太郎の坂の上の雲です。満州軍総司令部総参謀長児島源太郎大将と第三軍(満州軍総司令部の下部組織)参謀たちとのやりとりです。
”諸君(第三軍の参謀たちのこと)は、
昨日までの専門家であったかもしれないが、明日の専門家ではない。”
参謀とは、戦場において軍の作戦を考える人たちです。陸軍士官学校を優秀な成績で卒業したいわばエリートです。そのエリートたちに対して、上部組織あり、先輩の児玉大将が言ったセリフです。未来の専門家は今日から作られるもの。その未来に対して、常に実力をつけていく必要がある。
もう一つは、日経ビジネス220815号に掲載されていたTESLA CEOのイーロン・マスク氏のマスク流 仕事の流儀10則。この10則のうち2つを紹介します。
イーロン・マスク流 仕事の流儀
過去の実績でなく、第一原理に基づいて判断する
この“第一原理”の考え方は社員に最も浸透しているそうです。第一原理とは物理(というか自然科学全般?)で使われる言葉で、Sai10のように学生時代に物理をかじった人間にとってはなじみがあります。特に半導体など物性のメカニズムを理論的に示そうとするときは、この第一原理に基づいて理論展開(実際は計算)します。理論計算をする時に各原子とその原子で構成されている結晶構造だけを使って実験結果を使わずに計算する手法です。つまり、論理構成にパラメータ調整のような理論から導き出さない項目の導入を避けます。論理的には、“AならばB、CならばB”なら、“BはCに他ならない”というようなもの。“BはCである”は、前の2つの命題から演繹的に導き出されたもので、この論理に他の結論が参入する隙間がありません。マスク氏は、過去の実績や論理構成が明確でない解答は、容易に受け入れず、物理や数学で証明されている原理原則に立って事象を把握し、次の行動に活かすことを説いています。
例えば、製造業でしばしばありそうな事象はこんな感じです。コストダウンを目的として、図面や手順書は何も変更しません。その図面を加工する業者を目的としてAからBに変更して、その業者変更してから、自社工場での良品率が落ちた。だから、業者Bから業者Aに変更する。なぜなら、業者Aは過去の実績から良品率が高いから、というような場面は多くの事業者様で経験があるのではないでしょうか。これをマスク氏流に見直してみると、なぜ業者Bでは失敗するのか、をきちんと説明できなくてはいけません。例えば、ある加工寸法公差は±0.2と図面にはあるが、業者Aの出来栄えは-0.05~+0.1で加工されていた。一方業者Bの出来栄えは-0.15~+0.15だった。業者Aは、何等かの理由で加工寸法は±0.1以下が必要で特にマイナス側の加工寸法には注意が必要であることを知っていた。コストもそれなりにかけていた。業者Bは図面通りに加工してきた。この結果から、発注者側は、図面を±0.1等変更しないといけないことになります。相方の部品との勘合、その後の熱処理等で当該部品の加工精度は±0.1以下が必要であること第一原理です。
努力すれば能力は高められると信じるGrowth Mindsetを持つ
Sai10はこれも、坂の上の雲で、児玉源太郎参謀総長が第三軍の参謀に忠告したことと同じと思っています。一緒です。世の中は進化・変化しています。常に新しいスキルを身に着けること、身に着けたスキルの向上が求められます。活躍し続けるには成長し続けることが必要です。Growth Mindsetはマスク氏の用語ではなく、一般的な言葉ですが、“能力は努力や方法によって変えられる”とする考え方です。反対語はFixed Mindsetで、こちらは“能力は生まれつき変えられない”です。
努力すれば能力は高められる(=成長)と信じるGrowth Mindsetを持つ
失敗を恐れてチャレンジを避けるのではなく、むしろチャレンジを成長の機会と捉えていく。仮に失敗したとしても、周りのせいにしたり、すぐに諦めたりせず、必ず振り返り、学びの機会・次の成長への源泉としていく。これがGrowth Mindsetです。まさに“Make it happen with our firm confidence !”ですよね。
常に学ばないと。。。Midwayのように負ける。日本海軍に慢心はなかったか。
最後に、この慢心について
自信と慢心の違い
自信とは”やればできる”と自ら鼓舞すること。”Yes, I can!”の精神
一方
慢心とは”自分はすごいのだ”と思い込み、過去の成功が未来を担保すると勘違いすること。
ここにも“過去の・・”というPhraseがあります、実績は過去です。未来でも実績をだすため、実力が必要なのです(Sai10自身にも言い続けています)。これは、個人だけではありません。組織、会社…にも十分に当てはまると思います。成長しない組織を持つ会社は成長しません!!
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