アメーバ経営(製造部門の費用が増えたぞ!)

経営

 前回では、営業部門の経費・人件費に変化が生じたときに、付加価値や時間当たりの採算がどのように変化するかを見てきました。今回は、製造部門で経費・人件費が変化した時の各部門の付加価値や時間当たりの採算を試算してみます。計算を容易にするため、費用を変化させる部門は後工程製造部門だけとします(つまり、前工程製造部門は1.基準と全く変化しないとします)。前回と同様に後工程製造部門部門の経費・人件費は総額で20増えるとします。人件費が増えるということは労働時間が増えたことを意味するので、人件費の変化分に比例して労働時間が増えるとします。

 各項目の番号は前回から引き続いています。

3. 後工程製造部門の人件費が増加した時

 例えば、後工程製造部門で、組立のやり直しが生じた時を想定します。後工程の人件費が20増加し、下表を得ます。

  前工程製造部門 後工程製造部門 営業部門 その他
売上高  1,000 
部門経費 28016030 
人件費  806010 
製造原価 360220  
間接部門経費   100
総労働時間40304 
     
粗利・売上総利益    420
営業利益   280
部門配分率0.580.941.00 
社内売価格523842  
工程付加価値242.6159.428.1合計 430
時間当たりの採算6.15.37.0 
後工程製造部門の人件費が増加した時の付加価値と時間当たりの採算の変化

 製造部門の費用が20増えたので、粗利・売上総利益と営業利益は20減少しています。部門配分率は前回の1.基準と変更されています。後工程製造部門の費用が増えたたため、後工程の配分率が上がっています。その分、前工程製造部門の配分率が1.基準より減少しています。後工程における配分率が高くなったことで、後工程から営業部門への社内売価格が上昇しています。従って、前工程の付加価値は2. や3.で示された営業部門の費用の増加と同じだけ、部門配分率が減り、これに応じて付加価値が減少しています。後工程では、営業部門への社内売価格上昇により工程付加価値が上がりますが、後工程での総労働時間が増加したため、時間あたりの採算は減ります。営業部門は1.基準より工程付加価値が減少し、その分時間当たりの採算は減少します。今回は、その減少は小さかったようです。
 後工程で費用増ですが、前工程と営業部門では付加価値と時間当たりの採算は減少していることが解ります。

4.後工程製造部門の経費と人件費が増加した時

 例えば、不良品を作ってしまい、材料の再投入とやり直しのため労働時間が増加していることが想定されます。製造経費で10、人件費で10増加したとします。

    前工程製造部門  後工程製造部門  営業部門    その他
売上高  1,000 
部門経費 28017030 
人件費  805010 
製造原価 360220  
間接部門経費   100
総労働時間40254 
     
粗利・売上総利益      420
営業利益   280
部門配分率0.580.941.00 
社内売価格523842  
工程付加価値242.6149.428.1合計 420
時間当たりの採算6.16.07.0 
後工程製造部門の経費と人件費が増加した時の付加価値と時間当たりの採算の変化

製造部門の費用が20増えたので、粗利・売上総利益と営業利益は20減少しているのは、3.製造部門の人件費が増加した時と変更はありません。部門の配分率も3.と同じです。後工程製造部門の付加価値だけ3.より人件費が減少した10だけ減少しています。しかし、時間当たりの採算は労働時間の基準から増加が3.より少ないため、改善しています。営業部門の付加価値と時間当たりの採算は3.と不変です。

5.後工程製造部門の経費が増加した時

例えば、週末に設備の保守点検を行ったとか、後工程で使われる光熱費や部材の高騰が生じたことを想定します。製造経費で20増加したとします。

    前工程製造部門   後工程製造部門  営業部門   その他
売上高  1,000 
部門経費 28018030 
人件費  804010 
製造原価 360220  
間接部門経費   100
総労働時間40204 
     
粗利・売上総利益      420
営業利益   280
部門配分率0.580.941.00 
社内売価格523842  
工程付加価値242.6139.428.1合計 420
時間当たりの採算6.17.07.0 
後工程製造部門の経費が増加した時の付加価値と時間当たりの採算の変化

 製造部門の費用が20増えたので、粗利・売上総利益と営業利益は20減少しているのは、3. 4.と変更はありません。部門の配分率も3.4. と同じです。後工程製造部門の付加価値は、人件費が増加していないので、3.4. より少ないですが、その分労働時間が1.基準と変化していないので、時間当たりの採算は1. 基準に近いという結果が得られています(実際は、小数第2位で減少しています)です。営業部門の付加価値と時間当たりの採算は3.4. と同額です。

 次回で今回の試算をまとめてアメーバ経営的な考えは終わりにしてみたいと思います。

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