アメーバ経営(指標が変化すると…)

経営

 前回までアメーバ経営の概念の一部を用いて、部門収益と部門の付加価値を計算してみました。
 アメーバ経営では各アメーバで時間当たりの採算を最大化することが求められます。前回はこの時間あたりの採算に関する試算をしていなかったので、今回はここから始めます。そして、ここを基準として、各部門の費用が変化したとき、この時間あたりの採算がどう変化していくかと具体的に見てみようと思います。

各部門の付加価値と時間当たりの採算(基準)

 アメーバ経営の基本は、“時間あたりの採算を最大化する“であると理解しています。この時間当たりの採算は次式で計算されます。)
     各アメーバの時間当たりの採算=(各アメーバの採算)/総労働時間
 これを今回は
     各部門の時間当たりの採算=(各部門の付加価値)/総労働時間
とします。前回の計数を使うと下表のようになります。

 前工程製造部門後工程製造部門営業部門その他
売上高   1,000 
部門経費 280160 30 
人件費  804010 
製造原価 360200  
間接部門経費   100
総労働時間40204 
     
粗利・売上総利益   440
営業利益   300
部門配分率0.600.931.00 
社内売価格540840  
工程付加価値26014030合計 430
時間当たりの採算6.57.07.5 
各項目の計数(売上高~間接部門経費:設定値、粗利・売上総利益~時間当たりの採算:計算値)

 前回の表に対し、最終行に時間当たりの採算を追記していますが、合わせて粗利・売上総利益、営業利益も示しています。

 これから各部門の経費・人件費が変化したとき、各部門の時間当たりの採算がどう変化していくか見ていくことにします。
 比較のため、各部門の経費・人件費は総額で20増えるとします。人件費が増えるということは労働時間が増えたことを意味するので、人件費の変化分に比例して労働時間が増えるとします。実際は、残業代単価と通常時間の労務費単価が異なっていたり、人件費に福利厚生費を含めていたりすると人件費の変化と労働時間の変化は比例しないこともあると思いますが、簡略のため、人件費と労働時間は比例するとします。

部門の経費と人件費が変化した時の付加価値と時間当たりの採算

営業部門の経費と人件費が増加した時

 例えば、契約のため、“出張回数が増加した”とか、“交際費の増加”等で営業経費が10、営業部門人件費が10増加したとします。

 前工程製造部門後工程製造部門営業部門その他
売上高  1,000 
部門経費 28016040 
人件費  804020 
製造原価 360200  
間接部門経費   100
総労働時間40208 
     
粗利・売上総利益   440
営業利益   280
部門配分率0.580.901.00 
社内売価格523813  
工程付加価値242.6130.347.1合計 420
時間当たりの採算6.16.55.9 
営業部門の経費と人件費が増加した時の付加価値と時間当たりの採算の変化

 営業部門の費用が全体で20増えた(上表で黄色アンダーライン部)ので、営業利益は20減少しています。営業部門の経費増なので、粗利・売上総利益は不変です。興味深いのは、部門配分率が人件費を含めた部門全体の費用の割合で決める、としているので、部門経費が増加した営業部門には1.基準時より多く配分され、その分、前工程と後工程の製造部門の配分率が減少します。その結果、社内売価格が減少し、最終的に製造部門の2工程では経費・人件費が不変であるにも関わらず、この2工程の付加価値が減少し、時間当たりの採算も減少することです。逆に、営業部門の付加価値は増加しています。しかし、営業部門の総労働時間も増えているため、営業部門の時間当たりの単価は基準より減少する結果となりました。1.基準とした値から変化している部分を太青地で表記しています。

営業経費が増加した時

 例えば、“展示会に出展した“とか、”契約書作成のため、外部専門家に依頼した“等で営業経費が20増加した時を想定します。すると、下表を得ます。

  前工程製造部門  後工程製造部門  営業部門  その他 
売上高          1,000 
部門経費 28016050 
人件費  804010 
製造原価 360200  
間接部門経費   100
総労働時間40204 
     
粗利・売上総利益   440
営業利益   280
部門配分率0.580.901.00 
社内売価格523813  
工程付加価値242.6130.337.1合計 410
時間当たりの採算6.16.59.3 
営業部門の経費のみm増加した時の付加価値と時間当たりの採算の変化

 営業経費が20増えた(上表で黄色アンダーライン部)ので、営業利益は20減少しています。これは2と同じです。営業部門の経費増なので、粗利・売上総利益は不変です。営業部門は、部門配分率は、2と同様の値に変化しているため、営業部門の付加価値が基準より増加しています。従って、総労働時間が基準と同時間のため、営業部門の時間当たりの採算は増加しています。ここでも、製造部門の2工程の工程付加価値は1.基準より減少したままですので、製造部門としては何も変化していないのに、時間当たりの単価は2と同額で基準より、減少しています。逆にいうと、営業部門の経費・人件費が減少すれば、製造部門ではアメーバ経営の目的に一つである時間当たりの採算を向上させることができることを示しています。この表では2.の値から変化している部分を太青地で表記しています。

 次回は製造部門で経費・人件費が変化した時の付加価値と時間当たりの採算の変化を見ていきます。

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