2回目は、どのような事業が対象になるか、その要件は何か、時間が十分にない中でできるだけ加点を確保するために取り組む内容は何かを見てみます
対象要件
新事業補助金とものづくり補助金を比較してみると下表のようになります
| 新事業進出補助金 | ものづくり補助金(一般) | |
| (1)補助対象事業 | ①製品の新規性 | 公募要領 2.3.1 A 概要 革新的な新製品・新サービス開発 |
| ②市場の新規性 | (顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発すること。顧客・市場の新規性は不問 | |
| ③新事業売上高 (補助事業比率:売上高10% or付加価値額15% | ||
| (2)付加価値額 | 年平均成長率4.0%以上 | ①年平均成長率3.0%以上 |
| (3)賃上げ要件 | 一人当たりの給与支給総額の年平均成長率が実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上 | ②一人当たりの給与支給総額の年平均成長率が実施都道府県の最低賃金の直近6年間の年平均成長率以上 |
| 給与支給総額の年平均成長率を2.5% | 給与支給総額の年平均成長率を2.0% | |
| 役員含まず | 役員含む | |
| 返還要件あり | 返還要件あり | |
| (4)事業所内最低賃金 | 実施都道府県の地域別最低賃金より30円以上 | ③実施都道府県の地域別最低賃金より30円以上 |
| 返還要件あり | 返還要件あり | |
| (5)ワークライフバランス | 次世代育成対策支援法に基づく一般事業主行動計画、両立支援のひろばに公表 | ④次世代育成対策支援法に基づく一般事業主行動計画、両立支援のひろばに公表 (従業員21人以上のみ) |
| (6)金融機関要件 | 金融機関による確認書提出 | 要件にないが、添付は必須(3.4) |
| (7)賃上げ特例要件 | 補助金額の増額 | 補助金額の増額と補助率2/3へ |
| 給与支給総額の年平均成長率を6.0% | 給与支給総額の年平均成長率を6.0% | |
| and | or | |
| 実施都道府県の地域別最低賃金より50円以上 | 実施都道府県の地域別最低賃金より50円以上 |
補助対象事業
いずれの補助事業も申請者にとって、新しい製品・サービスを市場に提供するものである必要があります。ものづくり補助金の方は新市場の要求はなく、既存顧客へ新製品を供給することも可としています。
さらに新事業進出補助金の補助事業は、事業規模(売上高or付加価値額)が申請者の全体の事業の中で存在感のある規模まで実現させる計画を策定できなければなりません
付加価値額要件と賃上げ要件
補助金でいう付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費 で人件費と減価償却費は経費です。賃上げは、給与・賞与ですので、人件費の一部です。補助事業は資産が増えるので、減価償却費は増加します。賃上げの部分の原資は本業のもうけです。経営者からすると営業利益がそのまま現預金になるわけではありませんが、ここから支払利息なり、借入金の元本を削減していきたいところです。税引き後の純利益をプラスにして安定した純資産を実現していきたい気持ちですが、本業のもうけはできるだけ従業員の給与・賞与に反映させてもらいたいという国の意思が反映されています。ものづくり補助金は経営者含めた役員報酬にも反映させて欲しい気持ちが出ています。要件として必要な付加価値額、給与支給額や一人当たりの給与支給総額の年平均成長率はそれぞれの補助金で異なりますが、考え方は同一です。全体的に一人当たりの給与支給総額の年平均成長率の必要条件(実施都道府県の最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上)の方が給与支給総額の年平均成長率(2.0%や2.5%)高いです。給与の高いベテラン社員の退職や中途採用者による増員をこの要件にどのように当てはめていくか、は思案のしどころです。要は国は働き手を減らさず、増やす方向に経営を注力して欲しいという意思の表れです。
事業所内最低賃金
過去は実績ですし、25年は最低賃金が発表されているので、それ以上である必要がありますが、基準年度や事業年度実施期間のように将来の最低賃金はどのように見繕えばよいでしょうか。えいや、もありかもしれませんが、新事業進出補助金の賃上げ要件には都道府県別最低賃金年平均成長率(R2年度~R6年度)もありますし、国や中小機構から発表されている
(例:https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/reference_minimum_wage_5year_trend_ippan.pdf)ので、申請者の属する都道府県の成長率で見積もるのが良いのでは、と思います。
ワークライフバランス
いずれの補助金申請もも“次世代育成対策支援法に基づく一般事業主行動計画、両立支援のひろばに公表“が必須要件(ものづくり補助金の方は従業員21人以上)になっていますが、これも国の方針に準ずるモノです。手続き等に関しては、次の加点のところで示します。必要条件ですので、必ず実行される必要があります
金融機関要件
これは、資金の借入(補助金がでるまでのつなぎの資金を含めて)を予定している申請者は、金融機関から了承をもらってください、ということです。ものづくり補助金の方は要件に記載はありませんが、金融機関からの確認書の提出が必須であることは新事業進出補助金と変わりはありません
賃上げ特例要件
国が進めたい国民への給与振込額をふやしたいための特別ルールです。条件をクリアすると補助金額の増額(新事業進出補助金、ものづくり補助金)や補助率アップ(ものづくり補助金)であったりします。新事業進出補助金は2つの条件を同時に満たすことが要求されています。ものづくり補助金の方はそれぞれで特例が異なります(補助金額の条件と補助率)
なお、給与支給額や最低賃金など給与関連の要件は未達の場合、補助金返還義務が発生します
加点内容
加点項目を比較してみます。ものづくり補助金の方が多いですが賃上げ加算やDX認定があるので特別に多いということはありません。
| 新事業進出補助金 | ものづくり補助金(一般) |
| 9項目 | 15項目 |
| パートナーシップ構築宣言 | パートナーシップ構築宣言 |
| 成長加速マッチングサービス | 成長加速マッチングサービス |
| 経営革新計画 | |
| 事業継続力強化計画 |
各加点項目はそれぞれの公募要領をきちんと確認してください。
ここでは、加点項目が今所有していない申請者がこれから準備して間に合う項目を挙げます。これから対応しても間に合うので是非、クリアされることを期待します
・次世代育成対策支援法に基づく一般事業主行動計画
これは加点項目ではなく、必須要件です。計画を策定して、両立のひろばに申請日に前日までに公表する必要があります。策定開始から公表まで1から2週間かかるようです
・パートナーシップ構築宣言
10日から2週間程度かかります
・成長加速マッチングサービス
5日程度
新事業進出補助金の活用を考えている申請者の方は遅くとも今月中にスタートするのが良いと思います。

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