日経BPの23年2月13日号の特集のひとつは“円安、経済安保で日本回帰 敗れざる工場”というタイトルで最近に日本の製造業における取り組みが紹介されていました。その中でファナックが“自動化を突き詰めて製造コストを徹底的に絞っている”というコメントが掲載されていました。また、同じ日経BPの23年2月6日号の第2特集で東南アジアのタイで人手不足により、日本を上回る高単価の自動化設備を導入しているという記事が掲載されていました。両社に共通するのは工場における自動化の取り組みについてです。したがって、今回は“自動化”についてSai10なりの考え、留意点を示してみたいと思います。少し長くなりそうですので、2回に分けてお話します。
“自動化”はなぜ、行うのか。その理由は大きく2つあると思います。今回のその一つについてお話しします。それは上記の日経BPでのタイの記事と同様です
1.人手不足解消
最近は、製造業の現場で人手を確保するのが困難となってきました。作業員の働きやすさを考慮したり、装置の稼働率を高めるために取り組む”自動化”がこれにあたります。例えば、重量物の運搬作業、有害物質が発生する塗装作業や騒音が発生する職場、24時間稼働させたい職場(最近は夜勤者の確保が困難というお話しを聞いたことがあります)にロボットを導入して“自動化”を実現することが相当します。
“自動化”と旗を上げるのは簡単ですが、それが目的と合致するか、明確にする必要があります。
上記でしたら、省人で生産性を達成できることが大前提です。省人化を実現しても機械装置を24時間稼働できる。そうでないと、機械装置Aと機械装置Bの間の物流には人を介す必要があった場合には、24時間稼働には相応の人を準備することが必要です。相応の人が準備できなければ、結局、人がいる昼間しか機械装置は稼働せず、それは危険な作業でなければ、何も大きな投資をして“自動化”を実現せず、現在の設備と同等の設備投資で生産高を上げることができるかもしれません。
人の存在をなくして機械装置を稼働させるためには、最初のタイの工場のように無人搬送ロボット(Automatic Guided Vehicle : AGV)を走りまわせる必要があったり、ファナックの工場のように工程と工程での部品の受け渡しを絶妙なロボットの動きとロボット間のリレーによって、途切れることのない加工をする、といったことが必要になります。この”自動化”の取り組みは、その工程に必要なのか、その工程の稼働が向上すると全体の生産性はどう変化するか、を見た上でどこにどの程度の投資をするかの判断が必要になります。当然、律速している工程の生産性を上げるのが最初にやるべきことで、単にロボットアームが動いたり、AGVが走り回ったりする姿は博物館では見ごたえありますが、博物館と生産する現場・工場は違います。
“自動化”をただロボットのアームが動き、AGVが走り回るPerformanceにしないこと。“自動化”することを目的とは絶対にせず、工場のどの工程をどれくらい生産性向上させる必要があるのか、そのための手段が、機械装置を導入して、それを“自動化”させて稼働させることなのか、”自動化“で何を達成したいのか、を関係者全員が合意していることが大事です。手段の目的化は、投資対効果が絶対に得られません
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